インバウンド需要の回復により訪日観光客が増加する中、飲食店では英語での接客を求められる機会が急速に増えています。
しかし、これまで日本人のお客様を主な対象としてきた多くの飲食店にとって、英語での対応は容易ではありません。一方で、この対応を怠ると、外国人観光客という大きな市場を逃すことになりかねません。
そのため、英語での接客対応は今や飲食店にとって重要な課題となっています。
ここでは、飲食店での英語接客において、来店時からお見送りまでの場面別フレーズや、シンプルで伝わる英語表現のコツ、文化の違いに配慮した接客の注意点を解説します。
英語が苦手な人でも導入しやすいツールの活用法も紹介しているので、接客力向上に、ぜひお役立てください。
飲食店における英語対応の状況
飲食業界では、英語を使った接客の必要性が高まっているにも関わらず、対応できている飲食店が少ないのが現状です。
実際、日本政策金融公庫が行った「インバウンド対応に関するアンケート調査」(2023年)によると、外国人観光客の利用が「ある」と回答した企業は全体の41.8%にのぼり、飲食業に限るとその割合は57.0%にまで上昇します。一方で、外国人対応に何らかの取り組みを「実施している」と答えた企業は26.0%にとどまっており、多くの店舗がニーズに応えきれていない状況にあると言えます。
インバウンド需要が増加している中、対応できる店舗とそうでない店舗では、外国人顧客の獲得において明確な差が生まれ、今後の店舗運営に大きな影響を与える可能性があるのです。
参考:インバウンド対応に関するアンケート調査結果|日本政策金融公庫
英語で接客できる飲食店は他店との差別化ができる
多くの飲食店が英語での接客に十分な取り組みを行えていない現状だからこそ、早めの準備がビジネスチャンスにつながります。「英語で接客ができる」だけで他店と大きく差をつけることができ、早期に対応しておけば有利になります。
例えば、外国人観光客の多くは、訪問前にGoogleマップやSNSで「英語対応可能」な店舗を探す傾向があり、対応できる店舗は自然と選択肢の上位に入りやすくなります。
また、言葉の不安なく食事ができたという体験は、口コミやレビューでの高評価につながりやすく、それがさらなる外国人客の呼び込みという好循環を生み出します。一方で、対応できていない店舗は、たとえ料理が美味しくても「言葉が通じない」という理由だけで敬遠されてしまうリスクがあるのです。
そのため、英語での接客対応は今後の競争を生き抜くための重要な戦略になります。
対応が遅れるとお客様が他店に流れるリスクがある
英語での接客対応ができていない飲食店は、知らず知らずのうちにお客様を他店へと手放しているかもしれません。
英語が通じないことで不安を感じたり、注文がうまくできなかったりする経験は、外国人のお客様にとって大きなストレスとなるためです。言葉の壁は、対応しなければそのまま来店しない理由になってしまいます。また、ほんの少しの工夫や準備で、その壁を来店のきっかけへと変えることもできるのです。
一方で、他の飲食店が英語での接客対応を始めれば、これまで言葉の壁で選ばれていたお客様も流れてしまう可能性があります。
飲食店ですぐに使える英語接客の基本フレーズ
「英語で接客」と聞くとハードルが高く感じるかもしれませんが、実は飲食店で必要とされる英語の多くは、簡単な定型フレーズを覚えるだけで対応可能です。
そのため、英語が得意でなくても、基本的な表現を場面別に押さえておくことで、お客様に安心感を与えることができます。ここでは、場面ごとに使えるフレーズを紹介します。
来店・席案内時のフレーズ
お客様が来店された際の第一印象は、店舗全体の印象を大きく左右します。特に英語が通じないという不安を持った外国人のお客様にとっては、最初のひとことが安心感につながる大切な瞬間です。
例えば、以下のような表現を覚えておくとよいでしょう
- “Welcome! How many people?”(いらっしゃいませ。何名様ですか?)
- “This way, please.”(こちらへどうぞ)
- “Please wait here a moment.”(少々お待ちください)
どれも短くて簡単な表現ですが、表情とジェスチャーを添えることで、しっかりと伝わります。重要なのは完璧な発音ではなく、相手を思いやる気持ちです。まずは、笑顔で自信を持って声をかけるところから始めてみてください。
注文受付で使えるフレーズ
注文を受ける場面では、確認不足によるトラブルを防ぐためにも、簡潔でわかりやすい英語を使うことが大切です。聞き返されたときにも慌てないよう、基本の流れを押さえておきましょう。
代表的なフレーズには以下のようなものがあります。
- “Are you ready to order?”(ご注文はお決まりですか?)
- “What would you like to drink?”(お飲み物はいかがなさいますか?)
- “Would you like the set menu or à la carte?”(セットにしますか?単品にしますか?)
- “Anything else?”(ほかにご注文はありますか?)
迷っている様子があれば、「Take your time.(ごゆっくりどうぞ)」や「I’ll be back in a moment.(しばらくしたらまた伺います)」と伝えると、お客様に安心してもらえます。
注文のやりとりは、英語に苦手意識を持ちやすい場面ですが、使う言葉は決まったパターンの中での繰り返しです。1日ひとつずつでも覚えて実践していくことが、自然な英語接客への第一歩となります。
メニュー説明・おすすめ紹介のフレーズ
外国人のお客様の多くは、日本の料理に興味はあっても、使われている材料や調理法が分からないという不安を抱えています。そのようなとき、メニューをただ渡すだけではなく、ひとこと添えて説明できると、信頼感が高まります。
メニューの説明時に使える代表的なフレーズには、以下のようなものがあります。
- “This is one of our most popular dishes.”(こちらは当店の人気メニューです)
- “It’s grilled chicken with sweet soy sauce.”(甘辛いタレで焼いた鶏肉です)
- “It doesn’t contain any meat.”(お肉は使っていません)
また、ベジタリアン対応やアレルギーの有無を確認するフレーズも重要です。
- “Do you have any food allergies?”(アレルギーはありますか?)
- “This contains peanuts.”(これはピーナッツを含んでいます)
適切な説明を加えることで、お客様に安心して食事を楽しんでいただけます。「食の安心」は、言語を超えて伝えるべきおもてなしの一部です。
料理提供・サービス時のフレーズ
料理の提供時や食事中のサービスも、お客様にとっての体験価値を高める大切な要素です。例えば、料理を運んだ際には次のような言葉を添えてみてください。
- “Here you are.”(どうぞ)
- “Enjoy your meal.”(ごゆっくりどうぞ)
- “Is everything okay?”(お料理に問題はございませんか?)
また、食事中にお水を注ぐときや、食べ終わったかどうかを確認する場合にも一言添えるだけで、お客様に喜んでいただけます。
- “Would you like some more water?”(お水のおかわりはいかがですか?)
- “Can I clear the dishes?”(お皿をお下げしてもよろしいですか?)
丁寧な対応は、口コミやレビューの良い評価につながりやすくなります。「気配りがうれしかった」と感じてもらえるようなひとことを意識してみてください。
お会計・支払い時のフレーズ
会計は、お客様が最後に接するサービスの一つであり、ここでの印象が体験全体の満足度を大きく左右します。
会計時によく使われるフレーズとしては以下のとおりです。
- “Here’s your bill.”(こちらが伝票です)
- “You can pay at the register.”(レジでお支払いください)
- “Do you take credit cards?” → “Yes, we accept Visa and MasterCard.”(クレジットカードは使えますか?→はい、ビザとマスターが使えます)
また、QRコード決済や現金の有無など、支払い方法に関するやり取りもあらかじめ準備しておくとスムーズです。
お見送り・再来店促進のフレーズ
お客様をお見送りする際には、感謝と再来店への期待を込めた言葉が好印象を残します。とくに、旅行中の外国人にとって、こうした温かな言葉は記憶に残りやすいものです。
例えば、以下のようなフレーズがあります。
- “Thank you very much.”(ありがとうございました)
- “Hope to see you again.”(またお会いできるのを楽しみにしています)
- “Have a nice day!”(良い一日をお過ごしください)
- “Enjoy your trip in Japan.”(日本での旅を楽しんでください)
これらのフレーズは、どれも短く、すぐに覚えられるものばかりです。お見送りの際に笑顔を添えて伝えることで、店の印象を大きくアップさせることができます。
飲食店の英語接客で気をつける3つのポイント
英語で接客する際に誤解やトラブルを避けるために意識すべき重要なポイントを3つに絞って解説します。
- シンプルで分かりやすい英語を心がける
- 食文化・アレルギー情報は確認が必要
- 文化の違いで誤解を招くジェスチャーに注意
それぞれのポイントについて解説します。
シンプルで分かりやすい英語を心がける
英語に自信がないときこそ、使う表現は短く・簡単に・はっきりとが基本です。
難しい単語や正しい文法を使おうとするよりも、相手に伝わることを意識しましょう。例えば「Would you like to have a look at the menu first?(メニューをご覧になりますか?)」という丁寧な表現も悪くはありませんが、初めての方は「Menu?」「This is menu.」のようなシンプルな伝え方でも十分です。
また、早口にならず、相手の目を見てゆっくり話すだけでも、印象は格段に良くなります。完璧を求めるよりも、相手に通じるという前向きな気持ちで臨むことが成功の秘訣です。
食文化・アレルギー情報は確認が必要
英語で接客する際に特に気をつけたいのが、「食文化の違い」と「アレルギーへの配慮」です。これは単なる言葉の壁だけではなく、食に対する価値観や安全意識の違いが背景にあるため、丁寧に対応する必要があります。
例えば、日本人同士であれば「茶碗蒸し」と言えば、なんとなく味や材料のイメージが共有されます。調味料の使い方や食べ方も、説明しなくても通じることが多いでしょう。
しかし、外国人のお客様にとっては、その料理がどんな食材で作られているのか、どのように味わえば良いのか、情報が全くない状態であることも少なくありません。
さらに、宗教や文化的な背景によって避ける食材がある方もいます。豚肉やアルコールを控えるイスラム教徒の方、動物性食品を摂らないビーガンの方、乳製品に敏感な体質の方など、食事が個人の信条や健康と深く結びついている場合があるのです。
そして何より重要なのが、アレルギーに関する情報の伝達です。ピーナッツ、小麦、卵、エビといった食材に対して強いアレルギー反応を持つ方は、少量でも命に関わることがあるため、曖昧な対応は絶対に避けなければなりません。
「I’m not sure.(よくわかりません)」ではなく、「Let me check.(確認いたします)」と伝え、正確な情報を伝えることが、安全な接客につながります。日本では当たり前でも、海外の方にとっては説明されないとわからないことが多く存在します。だからこそ、一つひとつの説明が、信頼を築くきっかけになり得るのです。
文化の違いで誤解を招くジェスチャーに注意
ジェスチャーは、同じ動作でも国によって全く異なる意味を持つことがあります。
例えば、日本では手のひらを相手に向けて上下に振る手招きは「こちらへどうぞ」の意味ですが、欧米やドイツでは「向こうへ行ってください」と誤解されることがあります。
文化的ギャップを防ぐには、ジェスチャーと一緒に一言添えることが効果的です。「This way, please.」など短い表現を使うことで、誤解を避け、より丁寧な印象を与えることができます。
また、以下のようなジェスチャーにも注意が必要です。
- 顔の前で手を振る:においを避ける動作と見なされ、「臭い」という否定的な意味で使われることがあります
- 人差し指と親指で丸を作る(OKサイン):日本では「お金」「OK」でも、フランスでは「役立たず」や侮辱の意味と捉えられる場合があります
- 小指を立てる:中国では「出来の悪いもの」「軽蔑」のサインとされることがあります
- ピースサイン(手の甲を相手側に):ギリシャでは侮辱を意味するジェスチャーになることがあります
文化の違いを尊重し、伝え方に細やかな配慮を加えることは、言葉以上に誠実なおもてなしになります。ほんの少しの意識が、お客様との距離を自然に縮めるきっかけになるでしょう。
英語スキル習得前でも接客にすぐに使える対策
英語での接客に挑戦したいと思っても、いきなり流暢に話すのはなかなか難しいものです。ここでは、英語が話せなくても、すぐに実践できる接客の工夫やツールを紹介します。
英語メニューの準備
英語での会話が難しくても、英語メニューが一枚あるだけで接客の不安は大きく軽減されます。
外国人のお客様にとっても、料理名や食材があらかじめ英語で記載されていれば、自分のペースでメニューを確認し、安心して注文できるためです。とくに効果的なのが、料理名だけでなく、簡単な説明文や写真を添えることです。例えば「Grilled Chicken with Soy Sauce(鶏の照り焼き)」のように、調理法と味のイメージが伝わる表現を添えておくと、お客様が料理を選びやすくなります。
さらに、“Please point to your order.(指で注文を教えてください)”といった一言をメニューに添えておくと、注文時のやり取りもスムーズになります。指差し注文は、お客様とスタッフ双方にとって共通の安心できる手段です。メニュー上の番号や写真を指し示しながら確認することで、言葉が通じなくても誤解なく注文を取ることができます。
関連記事:【飲食店向け】外国人客のニーズを満たす英語メニュー作成の課題と解決策
翻訳機・翻訳アプリの活用
英語での会話に不安がある場合でも、翻訳アプリや音声認識ツールを活用することで、円滑なコミュニケーションが可能です。スマートフォンやタブレットに無料でインストールできるアプリが多く、すぐに導入できる手軽さも魅力です。
例えば、総務省が開発を支援している多言語翻訳アプリ「VoiceTra(ボイストラ)」では、音声を認識して文字に変換します。そこから目的の言語に機械翻訳を行い、さらに翻訳された文章を音声で出力する、三段階の高性能な翻訳支援機能を備えています。
飲食店の現場では、「温めますか?」「会計はこちらです」「アレルギーはありますか?」など、限られたパターンの定型会話が多いため、アプリの効果が非常に高いです。もちろん、アプリを使うだけで全てが伝わるわけではありません。しかし、伝えようとしている姿勢が、お客様への大きな安心感に変わります。
言葉に自信がないからこそ、テクノロジーの力を味方につけて、安心と満足の接客を実現しましょう。
セルフオーダーシステムの導入
英語対応に不安を感じる飲食店にとって、セルフオーダーシステムは大きな助けとなります。近年普及しているタブレットやスマートフォンを使ったこのシステムは、お客様自身で注文を完結できるだけでなく、多言語対応も進んでいます。
例えば、QRコードを読み込むと、英語はもちろん、中国語、韓国語、タイ語など複数の言語選択が可能です。外国人のお客様は自分のペースで注文でき、料理写真の表示が言葉の壁を越えた安心感を提供します。
セルフオーダーシステムは、英語対応スタッフが常駐しない店舗でも安定したサービス提供を可能にします。さらに、スタッフの負担を軽減することで、料理提供や清掃など他のサービスに集中できるメリットがあります。
また、シンプルで視覚的に分かりやすい操作性は、年齢や国籍を問わず誰にでも使いやすく、注文ミスや聞き間違いによるトラブルを防ぎます。
このような誰にとっても優しい設計が、外国人対応の質を向上させる鍵となります。小規模な店舗でも導入しやすい簡易型のQRオーダーシステムが多く登場しており、初期費用を抑えながら効果的な英語対応が実現可能です。
QRオーダーと多言語対応の「スマセル」で英語接客の不安を解消
スマセルは、テーブルに設置したQRコードをお客様がスマートフォンで読み取るだけで、多言語対応の画面で注文ができるセルフオーダー型システムです。
特別なアプリのダウンロードは不要で、シンプルな操作で注文ができます。外国人観光客も直感的に使える設計になっており、注文のやりとりを言葉に頼らずスムーズに完結できる点が大きな特徴です。画面は英語・中国語・韓国語など、多くの言語に対応しており、料理写真・簡潔な説明文・アイコンなどが表示されることで、言葉がわからなくても操作できます。
また、注文受付を自動化することで、ピークタイムの対応効率が上がり、スタッフの精神的・時間的負担が軽減されます。注文内容がそのままPOSやキッチンに連携されるため、オーダーミスの防止や業務の見える化にもつながります。
まとめ
飲食店での英語接客は難しそうに聞こえるかもしれませんが、実際には基本的なフレーズや少しの工夫で十分に対応可能です。
例えば、来店時からお見送りまでの定型的なフレーズを覚えるだけでも、お客様の満足度を大きく高められます。また、英語メニューの整備や翻訳アプリの活用、セルフオーダーシステムの導入など、英語が苦手な方でも導入しやすいサポートツールも充実しています。
中でも、多言語対応のQRオーダー「スマセル」は、言葉に頼らずともスムーズな接客をおこなえる、これからの時代に合ったシステムです。お客様の安心と、スタッフの負担軽減の両立を叶える選択肢として、ぜひ一度ご検討ください。